【嶺北地域の高齢化問題】地域密着・介護事業を通して、高齢者の生きがいを作る挑戦について話を聞いた!


限界集落とは、過疎化などで人口の50%以上が65歳以上の高齢者になり、維持が困難になってきている集落のこと。

社会学者の大野晃氏が、高知大学人文学部教授を勤めている際に提唱した概念で、2000年(平成12年)の時点で「限界自治体」とされたのは高知県長岡郡の大豊町のみでした。

このように嶺北地域は日本の中でも人口減少・高齢化が進む課題先進地域であるといえます。

嶺北地域公共交通協議会「高知県嶺北地域公共交通網形成計画」より

より具体的に見てみると、嶺北地域では人口の減少が続いており、2045年には人口が5,651人になると予想されます。

これは人口が16,639人いた2000年と比較すると45年で34%にまで減少するということになります。

嶺北地域公共交通協議会「高知県嶺北地域公共交通網形成計画」より

また高齢化についても高知県全体と比較すると10%以上高い数値で推移しています。

2045年における高齢化率の予想は52.8%。

つまり嶺北に住んでいる人の2人に1人以上が65歳以上となるのです。

それでは、嶺北地域の高齢化や人口減少によって、どのような問題が起きているのでしょうか?

またこうした課題に対して、どのような取り組みがされているのでしょうか?

今回はこうした嶺北の人口減少・高齢化について、デイサービス長老大学を運営する澤本洋介(さわもとようすけ)さんにお話を伺いました。

人手不足は既に起こっている

澤本洋介(さわもとようすけ)さん

千葉県出身。カヌーが大好きで、きれいな川の近くに住みたいと、2005年に高知県の高知市に移住。2年後の2007年に本山町へ2段階移住。はり・鍼マッサージやケアマネージャーの事業所運営を経て、現在はデイサービス長老大学を運営している。HPはこちら

ーーー嶺北地域における高齢化の現状について、澤本さんの考えを教えてください。

嶺北の中でも状況は大きく異なります。

本山町と土佐町については、当面は高齢者の方の人口はほぼ変わらない微減状態で続いていくと予想されています。

また大豊町では高齢者の方の人口が激減している状態です。

人口減少の段階ですね。

ーーーこうした現状の中で起こる問題とは何でしょうか?

嶺北地域の課題としては、高齢者の方を支える世代の人口が減少することです。

介護の需要は増える中でそれを支える力が少なくなっていく。

これが一番の問題だと思っています。

ーーー高齢者の方を支える人がいないと、どうなるのでしょう?

高齢者を支える方がいないということは、家庭内での支援などが難しくなってくるということです。

つまり高齢者の方のみの家庭や、高齢者の方が1人で暮らすというケースが多くなってきます。

ーーーその場合、介護施設にて高齢者の方の支援を行うのでしょうか?

はい。家庭内での支援を助ける場所の一つとして、私が運営するデイサービス長老大学があります。

ですが実はこの在宅介護を支える介護事業所もまた、人手不足が進んでいます。

デイサービス長老大学とは

高知県本山町にあるデイサービス。「高齢者の皆様と共に未来をつくる」という理念のもと、昔の暮らし・昔の仕事・今考えていること・感じていること等を聞いて記録する「聞き書き介護」に取り組んでいる。HPはこちら

ーーー人手不足とは、具体的にどういった状態なのでしょうか?

一つ挙げられるのは、若い世代のスタッフが少ないということです。

今、現場では60代〜70代の方が活躍されています。

現在この町の介護を支えてくださっているこの世代の方が80歳、90歳になってきた時、この方達を支え介護する人材がいないんです。

ーーー若い人が市内や県外に流出してしまうんですね。

人材不足は介護施設だけではありません。

各家庭、各業種、学校関係、防災関係、地域行事関係、…いろいろな所で人手不足なため、人材と人の時間の取り合いは起こっています。

今までと同じことを同じやり方で続けることはできません。

少ない人手をどこでどう使うかは、なかなか難しい。

ーーーなるほど…人手不足というのが1つ現状の課題なんですね。他にはありますか?

世界的に実施されたアンケートで、「高齢者のことを社会のお荷物だと思いますか?」という質問項目があったんです。

日本でのアンケート結果は、高齢者ほど自分のことをお荷物だと思っている、というものでした…。

ーーー確かに…私の祖父母も「もう歳やから」が口癖になっています。

ただ高齢化社会の中で社会の構成員の何十%をも占める方々が、自分のことをそんな風に思っていたら社会としても未来が暗いじゃないですか!

こうした高齢者の方が自分のことをお荷物だと考えることも、解決したい課題だと感じていました。

聞き書き介護で地域の魅力を発信

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高知県で古くから使われてきた背蓑(せみの)について話している様子

ーーー澤本さんは、こうした課題に対してどのような取り組みをされていますか?

高齢者の方が自分をお荷物だと思うことに関しては…

大前提として、人をお荷物と捉えることを、私は悲しいことだと思っています。

人は、何の役に立たなくても大切な存在です。

そこは大前提。

ですが、今まで期待されてきた役割が加齢のため果たせなくなってしまった高齢者の皆さんが自分自身をそう捉えてしまうお気持ちはよくわかります。

人の役に立つことが、人にとって大きな喜びであることは事実。

私自身、移住後に高齢者の方にいろいろと教わってきました。

その後の嶺北ぐらしにたいへん役に立つことばかりで、とてもありがたく感謝しています。

高齢者の皆様の知識と経験は、若い世代にとっても、必ず役に立つ

これは実感しています。

こうした経験から、人の役に立つ喜びを感じられるデイサービスを絶対に作りたいと思いました。

ーーーまさに、長老大学のスローガンの一つに人の役に立つ充実感という項目がありますね。

はい。私はデイサービス長老大学という通所介護施設を運営しています。

そこではこの3つのミッションを掲げています。

  • 高齢者の皆様が「人の役に立つ充実感」を実感し、元気になれるデイサービスをつくる
  • 高齢者の皆様が尊敬され、長寿を心から喜べる社会をつくる
  • 高齢者の皆様と共に世の中に新しい価値をつくる

ーーー具体的にどのような取り組みを経て、「人の役に立つ充実感」を得られるのでしょうか?

これは嶺北地域の人口減少や高齢化の課題に対して行っていることにも繋がってくるのですが…

デイサービス長老大学では、聞き書き介護というものを行っています。

これは長老大学のご利用者さんに、昔の仕事や暮らし、現在考えていることなどをお聞きし、記録するというものです。

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背蓑(せみの)についての聞き書きメモ。ぎっしりと文字が詰まっている。

ーーー聞き書き介護によって、高齢者の方にどのような変化があるのでしょうか?

聞き書きの間、ご利用者さんは本当に活き活きと楽しそうにお話をして下さいます。

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背蓑(せみの)を嬉しそうに背負うご利用者さん

ーーーわぁ…!とても楽しそうで、こちらも笑顔になってしまいます!!

また、記録した聞き書きを地域の魅力を発信したいと考えています。

高齢者の方はたくさんの知識と経験をお持ちで、そのお話から現在は見られない嶺北の文化や価値観を感じる事ができます。

そうした地域で眠っていた魅力を発信するために、聞き書きを役立てます。

例えば2019年には、「長老大学×アウトドア展」を行いました。

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大正昭和の時代から続く嶺北の魅力を、月替りでパネル展示。

ーーーこれはどういったイベントだったのでしょうか?

聞き書きで記録したご利用者さんの思い出の中から、川や山などアウトドアに関わるものを選び、展示したんです。

吉野川で流送(※)をしよった。仕事は冬よ。冬に川に落ち込んだら冷うてたまらんかった。夏は遊びで瀬を下った。瀬は一本の丸太に乗って下る。友達が順々にうまく下ると、よし!ワシも!と思うのよ。夏は落ちても冷うないけど、夏は落ちんのよ(笑)面白うてたまらん。

※流送 木材を川に流して運搬する職業

「長老大学×アウトドア展」8月 より

ーーーこんなことが数十年前ここで起こっていたんですね。
   確かに、情景が浮かんでさらに嶺北の魅力を感じられた気がします…!

このように、聞き書き介護の記録を地域の魅力として発信していくことで、少しでもこの地域に若い世代の方が来て頂けたらいいなと考えています。

ーーーなるほど…!介護を通じて地域の魅力を発信するというのは素晴らしい考えですね!

ありがとうございます。地域の魅力を一番知っているのは、長く住まれているお年寄りの方だったりしますからね。

ーーー確かに。言われてみればそうですね!お年寄りの知恵と新しい動きが組み合わさることで、大きな可能性があるような気がします!

まさに、そうなんですよね。

今後も、嶺北が課題先進地域であるという状況を悲観的に捉えすぎず、逆に良さとして活用していきたいと思います。

ーーー素晴らしいです!!今回は貴重な話をありがとうございました!

こちらこそ、ありがとうございました。

世代間の壁をなくす

澤本さんのお話をお伺いして、嶺北の高齢化について、よりリアルなイメージを持つことができました。

特に2045年には「嶺北に住んでいる人の2人に1人以上が65歳以上となる」というのは衝撃的な数字だと思います。

そんな中で重要なのは、世代間の壁をなくして問題に取り組んでいくことなのではないでしょうか?

人が少なくなるのですから、年齢に関わらず協力して地域の問題に向き合っていくいく姿勢が重要になってくると思います。

そういった意味では、長老大学さんのように、お年寄りの知識や経験を地域の魅力発信に繋げていくというのは、素晴らしい取り組みだと感じました。

そして、私たち「れいほくTV」も嶺北地域がより活気のある地域になっていく一端を担いたいと、気持ちを新たにしたのでした。

このメディアの運営者

田舎ディベロッパー君

高知県嶺北地方をPRする『れいほくTV』の編集長 普段は、藤川工務店で田舎を開拓する仕事に幅広く従事! 好きな食べ物は、『きゅうり・キウイ』などミドリの食べ物。 冷静沈着に淡々と事を進めるのが得意。

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